今回は、職人について話したいと思います。
私は若い頃、訓練校で、ある程度の知識や技術を学び、特注家具を専門に作っている会社に就職しました。
知識や技術と言っても、鉋や鑿の仕込み方や材料の種類や特徴、様々な組手の加工方法など、基本的な事は学びましたが。
いきなり実践で家具を作るというレベルではありませんでした。
そこで、まず最初は親方に付いて教えてもらいます、それが見習い期間となります。
一流を育てる 秋山木工の「職人心得」
親方が実際に作っているところを後ろで見て覚えるわけです。
図面をしっかりと理解し、形を理解し、作り方を学びます。
私の場合はその期間が二年間ありました。

親方から離れて物を作るといっても、まだ一人前ではありません。
職人というのは、早く、キレイに、正確に、作れなければ一人前ではないのです。
一つでも欠けていれば半人前なのです。

特注家具はほとんど同じ物を作ることはありません。使う材料や加工方法、使う金物や、取付方法など、その都度違うので多くの知識や技術を要します。
インターネットなど無い時代ですから、それを得るには教えてもらうか、経験を積み重ねるしかありませんでした。

幸い、私が勤めていた会社はベテラン職人が大勢居たので、一緒に組んで仕事をしたり、
横目で見ながら技や知恵を盗むなどして技術や知識を高めることができました。
それでも誰の知恵も借りずに全てを自分の考えだけで作れるようになるまで、10年かかりましたけれどもね。

よく考えると、私の親方も同じように多くの人の知恵や技術を盗んで技を磨いてきたのかもしれません。
そして、その上の親方も同じように。

そう考えると、私が受け継いできた技術や知識というのは、何十人、何百人の知恵や技を受け継いでいる、ということになるのかもしれません。
丁稚のすすめ―夢を実現できる、日本伝統の働き方
職人というのはそういう世界です、真似をする文化です。聞いたり、真似をするという行為はまったく恥ずかしいことではないのです。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、という言葉もあります。
誰からも教わらず、自分の考えだけで物を作った場合その先、早く、キレイに、正確に、製作をこなせるようになれるでしょうか。

例えば、野球のルールも知らず、やったこともない人が、誰からも教わらずルールや技術を覚えるまでにどれだけの時間と労力を要するでしょう。

今、多くの分野で、職人が高齢でリタイヤしてます。そういう私もあと数年で定年ですが(笑)

このブログを読んで、興味を持った人が一人でも多くこの業界に飛び込んで来てくれたら幸いです。

そして知恵や技術を受け継いで欲しいと願っています。微力ですが、手に職を身につけたいという願いの手助けを、ほんの少しでも出来たら、
それが先人達への恩返しになるのではないかと思っております。

ではまた。