薄い板材を何枚も積層して作る成型合板は、湾曲した椅子や家具などでよく使われる手法です。この成形合板の基本的な作り方について説明します。
特注家具や什器製作で一番多いのは、アール形状の扉です。厚みが20㎜のものが多く、これはラワンの曲げ合板を積層して作ります。ラワン曲げ合板には、3㎜、4㎜、5㎜、9㎜、12㎜といった種類があります。サイズは、サブロク3×6(915×1825㎜)やロクサン6×3(1825×915㎜)などがあり、曲がる方向で呼び名が変わります。
曲げ合板3×6サイズ 曲げ合板6×3サイズ表面にメラミン化粧板を後で貼る前提で、下地となる成型合板は、メラミン化粧板の厚み分2㎜を引いた18㎜の厚みで作ります。成型合板は、積層枚数が多いほど形状が安定します。少ないと、合板が戻ろうとする力が強くて伸びてしまいます。
少ない枚数で成型合板を作ると伸びが大きい
積層枚数が多いと、合板も薄くなり、戻ろうとする力が弱くなります。さらに、接着面積が多くなるため、形状が安定します。
多い曲げベニヤを使って成形合板を作ると伸びが小さい今回は外面の半径(アール)が400㎜なので、5㎜の曲げ合板3枚と3㎜の曲げ合板1枚で作ります。
積層するベニヤの厚み詳細 曲げベニヤ1枚の曲がり具合 曲げベニヤ4枚の曲がり具合
成型合板を作るためには、まず最初に型作りから始めます。最後にプレス機で圧力をかけて挟むため、成型合板がゆがまないように、型には少し厚めの9㎜の曲げ合板を使います。
成形合板用型の詳細外アール(半径)が400㎜になるように計算し、型の寸法を出します。(メラミン化粧板の厚み分を引くのを忘れずに)
成形合板用型の図面図面にもとづいて型用の部材を取ります。アール形状を切り抜くやり方は、記事【R材の切り抜き方】で説明していますので、そちらを参考にしてください。
アール型の切り抜き同じ方法で複数枚取るか、最初の1枚をベースにして目地払いビットで複数枚取るかなどして、必要枚数加工します。
枚数の目安は、アール(半径)寸法の大きさにもよりますが、80~130㎜ピッチくらいで良いかと思います。
アール寸法が小さい場合は、ピッチは狭くするとゆがみが少なく出来ます。
下地ピッチ図 アール下地複数枚昇降盤で横部材を取ります、アールに沿うように角度を合わせます。
角度を合わせてカットした 後ろは平らに合わせる

45度よりきつい角度なら立ててカットします。
昇降盤でのカット図予定のピッチ数に合わせて墨を出し、組み立てます。
プレスでかなりの圧力が加わるので、接着剤をつけて、ビスで組んだ方が安心です。
成形合板オス用下地の組み立て 成形合板用型のメス型下地の組み立てオス、メス、成型合板用の型下地が組みあがりました。
成形合板メスオス下地組み立て完成
次に、9㎜の曲げ合板を貼ります。この時の注意事項は、曲げ合板を必ず直角に切ることです。これは、成型合板を切りまわす時に、この型を使うためです。
切り方については、後の記事で説明しますが、とても大切なので覚えておいてください。曲げ合板を貼る時は、タッカー打ちでも構いませんが、アールがきつくて浮く場合はビスで組みます。接着剤は付けなくても大丈夫です。
曲げ合板は直角にカット
9㎜の曲げベニヤをメス用下地に貼る

9㎜の曲げベニヤをオス型下地に貼る側面の角同士は合わせ、正面は平らに合わせて組みます。
ここがズレていると成型合板を切り回す時に、ねじれが生じます。
9㎜の曲げ合板は、角を合わせて貼る 9㎜の曲げ合板は、正面を平らに合わせて貼るオス型メス型、双方貼り終えました。
成形合板用曲げ型の完成成型合板用の接着剤は、大鹿レヂン(尿素)を使います。
大鹿レヂン20キロ缶粉末の硬化剤は1.8リットルの水で溶解させ、これを主剤の量に対して0.5パーセントの割合で入れ、よくかき混ぜて使います。
そのままだとガラスのようにカチカチになるので、少しだけ柔軟性を持たせるために、
木工用ボンド(白ボンド)を1割程混ぜます。これで衝撃に強くなります。
大鹿レヂン硬化剤 粉末曲げ合板、5㎜3枚、3㎜1枚にローラーで塗っていきます。薄く両面に塗ると接着不良も少なくなります。
尿素ローラーで塗布

尿素塗布完了型に入れてプレス機で、はさみます。※圧力をかけ過ぎると型が壊れるので注意
成形合板をプレス機でプレス型と成形合板5~6時間で硬化するので、外します。
成形合板完成
会社の稼働時間が8時間の場合、朝にプレスして、夕方にもう一度プレスすることができます。つまり、1日に2回プレスすることができます。
成形合板、寝かせた画像

次の記事では、この成型合板のアールが伸びてしまった時の対処方法について説明したいと思います。

海外の動画では、成型合板を作る時の接着剤に↓このボンドを使っているのをよく見かけます。評価はかなり良いみたいですが、実際はどうなんでしょうね。
私もそのうち使ってみたいと思っています。

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