アーチ状の成形板などの小口に木単板(0.6㎜)を貼る場合、長さを何等分かに分けて貼る方法が一般的です。しかし、この方法ではつなぎ目の線が何か所かに出てしまい、木目も流れてしまいます。
アール形状の成形合板
アール形状に単板を3分割で貼った画像単板のつなぎ目木目をアール形状に沿わせ、つなぎ目を出さないようにする、というリクエストをされた場合、職人として「できません」と言うのは難しいですよね。少し手間がかかりますが、うまくやる方法があります。まず、アーチの外周より長い単板を用意します。表面に下画像のようにV字の墨を出しておきます。
単板に斜め線を書く
裏面に速乾ボンドを吹き付けます。(ハケ塗り用でも可)
単板に速乾ボンドを吹き付ける


単板を引き割る道具を作ります。10㎜×70~50㎜×180㎜の板を二枚用意します。
無垢板2枚カッターの刃でも良いのですが、出来れば剃刀の刃が理想です。下画像のように配置します。
無垢板の上にカミソリ刃を置いた

カミソリ刃アップ挟みこんでビスでしっかりと固定します。
単板ひきわり治具斜めに出た刃の高いところは1.5㎜程度で良いでしょう。これで引き割る道具は完成です。
単板ひきわり治具の刃の部分を拡大きれいなベニヤ板を用意し、その上に速乾を塗った面を下にして単板を置きます。
真っすぐな板を用意し、それを定規に沿って少しだけ縁の部分を落とします。
単板を引き割る割り終えた単板次に6㎜で引き割りたいので定規を16㎜に合わせます。
メモリを16ミリに合わせるメモリを16ミリに合わせた部分を拡大割っていきます、まず一枚目。
連続して単板を引き割る繰り返して8枚引き割ります。
8枚、単板を引き割った引き割った単板8枚拡大斜め線の順に並べた単板5.5㎜のベニヤ板を用意して引き割った単板を下画像のように立てて並べます。
割った単板を重ねて立てる同じ厚みのベニヤで挟んでビスで固定します。
重ねた単板をベニヤで挟むベニヤ板をビスで固定ベニヤと単板が平らになるまで鉋で削ります。
重ねた単板の片面を鉋で削る
次にベニヤ板を4㎜厚に換え、裏面も同じように平らになるまで削ります。
重ねた単板の反対面も鉋で削る削り終えたらV字の墨通りの順で並べます。4㎜幅の単板が8枚出来上がりました。
小口を鉋で削り終えた単板を順に並べた成形板の小口に速乾を塗ります。
成形合板の小口に速乾ボンドを塗る
速乾が乾いたら、V字の墨順でアーチ枠に沿って、単板を貼っていきます。まず内側から貼ります。
成形合板に引き割った単板を貼り始める単板が重ならないように、隙間が出ないように、気を付けながら順に全てを貼ります。
内周と外周は長さが違うのでV字の墨を少しずらして貼るのがコツです。
引き割った単板をアール形状に貼った。堅木のへらなどで擦って圧着しておきます。
木製ヘラで圧着接着不良があると困るので、アイロンで押しておきます。
速乾ボンドは熱が加わると柔らかくなり、着きが良くなります。
単板をアイロンで貼る耳を取って仕上げたら完成です。
アール形状の成形合板の小口に単板を貼ったアール形状に沿って単板を貼った今回のアーチ枠は厚みが30㎜だったので、単板を4㎜×8枚で32㎜という計算で削りました。
アールの大きい曲面では、もっと幅は広く取っても大丈夫だと思います。
やる機会はあまりないかもしれませんが、こういうやり方もあることを覚えておいてください。

ではまた。

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