今回は、変形什器の製作例と題して、三方転びの家具の製作手順と加工方法について説明します。大きな家具や什器が斜めにデザインされたものを、限られた時間で簡単に作る方法はないかと考え、経験から試行錯誤し、見つけた方法を公開します。完成イメージは下画像のようになります。正面と側面が200㎜転んでおり、表面は全て白いメラミン化粧板で仕上がっています。
白いメラミン化粧板を貼った変形家具

木下地は全て18㎜のラワンランバーで、最終的には下画像のように組み上げます。
変形家具のメラミン化粧板を貼る前の箱正面図です。上部が外寸で、下部がメラミン分を引いた寸法になります。
変形家具正面図原寸でも良いのですが、CADを使えると正確で早く寸法を出すことが出来ます。
私が使っているのはAR_CADというフリーソフトですが、JW_CADという有名なフリーソフトもあります。JW_CADなら書店にたくさんのガイドブックが販売されているので機会があれば是非、活用してみてください。


正面図拡大側面図です。上部が外寸で、下部がメラミンの厚みを引いた寸法です。
変形家具側面図拡大した図になります。
側面図拡大
まず、天板と地板から加工していきます。少し大きめに木取りしたランバーを用意し、最初に勾配の面を落としますが、サイズが大きいので昇降盤では大変です。そんな時は電動丸ノコを使います。自由スコヤで刃の角度を79度(78.69を四捨五入)に合わせ、真っ直ぐな定規で切っていきます
 ※電動丸鋸での加工は危険を伴います。使用する場合は、工場責任者の指示に従ってください。
電気丸鋸の角度を合わせる
電気丸鋸で角度を切る
他にも、角度を落とす裏技があります。パネルソーを使って角度を落とす方法です。
パネルソーまず最初に、定規の高さを測ります。板を当てて墨を出せば簡単に測ることができます。この場合は70㎜ですね。
パネルソー定規の型取り寸法確認class=”black”>次に原寸を出します。切りたい角度が78.69度の板に対して、70㎜高さの定規の接点位置を出します。
この場合は350㎜となりました。
勾配の詳細3つある定規全てを350㎜に合わせます。
パネルソーの定規を350㎜に合わせたランバーはパネルソーの切り口に合わせて置きます。
パネルソーに合板を斜めにセッティングパネルソーに斜めにセッティングした合板そのままカットします。
パネルソーで斜めにカット簡単に角度を落とすことが出来ました。定規の位置を出す手間がかかりますが、数物などを作る時は、この方法だとかなり早く加工できます。
違うタイプのパネルソーでは、L型に組んだ板などを使用することで、同じように切る事が出来ます。
パネルソーで斜めにカットしたランバーコア合板パネルソーを使い斜めに切るほかの方法勾配を切り終えたら反対側を切って幅を決めておきます。天板が898㎜(小数点は四捨五入)地板が698㎜幅
パネルソーで幅決め横切り盤で長さを切ります。ここも角度が79度なので、90-79=11、丸鋸の軸傾斜角度を11度で合わせます。
※横切り盤での作業は大変危険が伴います。行う場合は工場責任者の指示に従ってください。
横切り盤の丸鋸角度を11度に調整上になる面の長さが天板で1998㎜、地板で1605㎜にカットしたら天地の切り出しは終了です。
横切り盤で合板を斜めにカットランバーコア合板2枚を切り終えた側板は全て横切り盤で切り出します。鋸傾斜角を11度のまま、長さを982㎜で切ります。
小さい方のランバーコア合板を斜めにカット合板の左右を斜めにカットした二枚の側板を抱き合わせてビスで止めます。
合板を抱き合わせてビスで固定上部に875㎜の墨を出します。
合板の上部の位置に墨出し下部に683㎜の墨を出します。
合板の下部の位置に墨出し墨を結びます。
合板表面に斜めに線を書く横切り盤の定規部に框材などをクランプで固定し、切っておきます。
横切り盤定規に框材をクランプで固定側板を乗せ、手前側の墨を框の切り口に合わせます。
横切り盤を使い、位置を合わせて合板を斜めにカットする前鋸目を墨に合わせたら、動かないように押さえた状態で切っていきます。
横切り盤を使い、位置を合わせて合板を斜めにカットし始め横切り盤を使い、位置を合わせて合板を斜めにカットし終えた以上で側板の切り出しは終了です。
合板2枚を斜めに切り終えた腰正面は、まず片側をパネルソーで勾配に切ります。この作業は天地材を切った時と同じです。
パネルソーで合板を斜めに切る
反対側は電動丸ノコで幅を決めます。その前に、丸ノコの刃の位置を確認します。使わない板を用意し、定規をセッティングします。電動丸ノコの角度を79度に合わせ、少しだけ鋸目を入れます。
電気丸鋸を使い、勾配カット
寸法を測ります。この場合、88㎜ですね。

電気丸鋸で合板を切る位置合わせ腰材に982㎜の墨を出したら定規を88㎜逃げでセッティングし、切ります。
定規と電気丸鋸を使い、合板を切っている側板を切った時と同じ工程で、両側を斜めにカットしたら、腰正面板の切り出しは終了です。
ランバーコア合板1枚を斜めに切った組み立てていきます。最初は腰正面と側板を先に組んだほうが楽そうです。
正面用合板と側面用合板をビスで組み立てる

正面用合板と側面用合板をビスで組み立てた
そのまま地板を組みます。
地板用合板を組み立てた返して天板を組みます。これで下地は完成です。
天板用合板を組み立てたメラミンを貼っていきます。貼る順番は最初に側板面、次に正面、最後に天板面で良いでしょう。
完成です。
変形什器にメラミン化粧板を貼って仕上げた

店舗什器などは、変形した形の物が多いですね。色々な作り方を経験し、知恵を絞って様々な選択肢を蓄積していくことが大切だと思います。
ではまた。

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